6/29-7/10▷構想計画所|月の台座ー島の定義から外れた岩礁の形象ー
2022年6月29日(水)~7月10日(日)
12:00~19:00 日曜は17:00 月・火休廊
月の台座が示すもの。
gallery fuでは、6月29日(水)~7月10日(日)まで構想計画所による展覧会「月の台座ー島の定義から外れた岩礁の形象ー」を開催します。
本展では、下記「エピローグ」にある「月の満ち欠け(潮の満ち引き)にともなって姿を変える岩礁を見て習慣を形成する人々の物語」を下敷きに、月齢と潮位の変化からその形を導いた立体作品を展示、その物語に想い浮かび上がる月の台座の姿を描きだします。月と岩礁と人間との関わりのなかに「さて、私たちはなにものであるのか」としばし沈思する時間をご共有いただけましたら幸いです。
gallery fu代表 鈴木智惠
エピローグ(展覧会によせて)
《》内は冒険家を自称するある人物から、ある岩礁についての伝聞を、私の理解できる範囲で文字に起こしたものである。
《その島は海底から隆起してきた花崗岩で形成された自然の産物であったという。島の形象は、月と太陽がこの惑星に働きかける力(引力)により周期的に変動する海面を利用して、月の満ち欠けと類似で連合していたということだ。
正確には大潮の満潮時にその姿を海面下へと消すため(新月との類似)、島の定義=領土を主張できる場から漏れ出る岩礁であり、そこは人間が棲まえない、無人の領域であったという。
彼岸に棲まう人間たちは、その島=岩礁を見て習慣を形成すると同時に、ここではない何処かを思い描いたという。
長い月日が経ち、太陽の運動をのみ習慣形成の原理とする人間たちが島の彼岸に棲まいはじめた頃、島は風化し始めた。元々そこへ棲まっていた人間たちは「このままでは自分たちが築き上げてきた体験に基づく習慣が変容してしまう」と怖れ、島の、その形状を維持するため人為的な介入を始動させた。なかには島の形が変わってしまうと、月もその姿を変え、最終的には消えてなくなると信じるものまでではじめたという。そしてその作業は今も続いているとのことだ。
想像力=構想力の台座と形容したくなるその島=岩礁は現在、花崗岩を僅かに残し、人為に覆われている。僅かに残ったそれらも別のどこかから移植されたものであるかもしれないとのことであった。
永続的な人為により管理された島は、延命治療の現場のように映ると同時に、墓標にも見えたと彼女は語った。》
構想計画所紹介
構想計画所は前野智彦が所長を務める「複数で形成された単数の緩やかな纏まり」=活動体で、構成員はプロジェクトごとに複数の表現者で組織される。また、各プロジェクトとゆるやかに関連するレクチャーやシンポジウム等を並行して多数企画している。「人間は自らが棲まっているこの世界を無意識のうちに、人間にとっての意味や目的、あるいは自我や主体といった整合性や一貫性を軸に理解しようとするが、世界は常に人間に無関心で無関係であるかのような出来事の続起に満ちている」このことを前提に出発する構想計画所は、整合性や一貫性に回収できない/されない世界、あるいは人間にとっての意味や目的、自我や主体すら崩壊させてしまうような出来事を、無人島という人間のいない世界、あるいは島という自然の力動が生み出す不安定な大地の生成過程へと、人文学(人文科学)的視点とともに独特の仕方で結びつけることで、人間がこの世界に棲まうことをさしあたり可能にしている「なにものか」を発見し、人間的な営みである芸術のフィールドから発信している。
主な個展
2021年「別名保存」gallery fu/神奈川
2021年「想像力の転回」Plaza Gallery/東京
2018年「想像力の転回」GALLERY HASHIMOTO/東京
2016 年「離人/島 ―人間よりも前から来る、あるいはその後へと向かうもの―」gallery COEXIST – TOKYO /東京
2014 年「Holt―雑木林を巡る哲学と美術と出来事―」小平中央公園脇の雑木林/東京《小部屋のある32m の破線》
主なグループ展
2017年 「引込線2017」旧所沢市立第2学校給食センター/埼玉
2017年 「Green Cube Project」
2015年 「第18回岡本太郎現代芸術賞展」川崎市岡本太郎美術館 /神奈川「Ω」
2013 年「Impact 8 ― International Printmaking Conference」Duncan of Jordanstone College of Art & Design /イギリス