9/20-10/1▷作間敏宏|治癒

2023年9月20日(水)〜10月1日(日)
12:00~19:00 日曜17:00まで 月・火休廊

懸命に生きようとする命

gallery fu では、9 月20 日(水)から10月1日(日)まで「作間敏宏|治癒」を開催します。
作間敏宏には3つの連作がある。ひとつ目は今回発表する細胞や命が新しいものと交換されるイメージの「治癒」。ふたつ目はいくつもの細胞や命が密着し連合するイメージの「colony」。「colony」は2020年にgallery fuにおいても発表した(2020_9/4-9/20▷作間敏宏|colony)。そして、「colony」と「治癒」とを合わせた「接着/交換」のシリーズの3つである。
今回発表する「治癒」は、ビニールハウスを想起させる半透明の素材に無数の穴を穿つ。(農業用)ビニールハウスを素材に用いたのは1995年からである。そのときの作間にとってビニールハウス(家)は、生物を守ってくれる「安全地帯」を意味していた。しかし東日本大震災を経て、ビニールハウスや家や家具など彼がモティーフとして使ってきたものの痛々しい状況を目の当たりにした。ハウスとは、逆に「治癒できないもの」として心に刻まれたそうだ。
本展覧会のハウスを模した作品の形状と存在は、過酷な外界から生命を護る皮膚だと言う。外界と自身をかろうじて分ける境界。それはあまりにも頼りなく弱々しい。そこに開けられた無数の穴は、さまざまなダメージを受けた痕跡であり、また細胞分裂を繰り返し、寄り添い助け合いながら生き延びていく生命体のようでもある。
作間の提示する世界を「生」と結びつけるのなら、その「生」は決して甘くなく、生と死の淵をどこまでも歩いてゆくような危うさがあるように思う。それでも、その「生」は愛おしくどこか救いが感じられる。
gallery fu代表 鈴木智惠


作品紹介(展覧会によせて)
1993年に連作『治癒』をスタートして30年が経ちます。もともとは、血族が世代交代によって生き延びてゆくようすを、たとえば怪我をして喪われた細胞が新たな細胞に置き換わって〈治癒〉してゆく身体の営みの相似態として可視化しようと始めた連作でした。当時の癒しブームとの不本意なシンクロがいやになって5年でストップしましたが、心のどこかで、電球のon/offで壁に家系図を描いたり、ビニールハウスや古い家具に体温のような無数の光を灯したりする仕事には、身体が〈治癒する〉原理の厳かさには届かない甘さがあるように感じてもいました。
その後3.11が郷里を襲い、この連作の大事なモチーフだったビニールハウスや家屋や家具の、原形をとどめないような残骸を見たとき、そこにこの連作が当初と違う姿で起ち上がってくる気がしました。こうして〈治癒しないもの〉を目撃した僕がその翌年に再スタートした以降の『治癒』には、無数に穴を穿ったハウス(家)や雨や水のイメージがあらわれるようになります。
ここに設置した作品も弱々しい穴だらけの皮膜で覆われたハウスですが、今回はそれらが連鎖/分岐してcolonyが形成されてゆくイメージがありました。生命の連鎖や世代交代が不確実で危うく、また身体の怪我が時には恢復しないことがあるとしても、それでもなお、集まりつながることを止めず全体で生き延びようとするはたらきが〈治癒〉の原理なのかもしれません。
作間敏宏

作間敏宏/SAKUMA Toshihiro
1957年 宮城県生まれ
1982年 東京藝術大学大学院修士課程修了

主な展覧会
2022年 個展「治癒」ギャラリーHAM/名古屋
2021年 個展「colony」ギャラリーHAM/名古屋
2020年 個展「colony」gallery fu/横浜
2020年「GLOBE is HOME」 Gallerie delle Prigioni/トレヴィーゾ
2019年「30 YEARS of ART COLONY GALICHNIK」Mala Stanica/National Gallery of R.N.Macedonia/スコピエ
2018年 個展「Healing」Tenri Gallery/ニューヨーク
2017年「Visual-Lines -3つのインスタレーションへのまなざし-」宇フォーラム美術館/東京
2016 年 個展「治癒」ギャラリーKingyo/東京
2016年「つくることは生きること- 震災『明日の神話』」川崎市岡本太郎美術館/川崎
2014年「 震災と表現」リアス・アーク美術館/気仙沼
2014年「生命の連鎖・イメージの連鎖」森鴎外記念館/東京
2014年「アート@土澤2014」旧花巻商工会議所東和支所・旧拓三建設/花巻
2012年「第10回アートプログラム青梅」青梅市立美術館/東京
2011年「THE RING III -TRACE-」東京国際フォーラム・エキジビション・スペース/東京
2010年 個展「 接着/ 交換」巷房1+巷房2+巷房階段下/東京
2008年「おおがきビエンナーレ2008/流れる」大垣ビル/大垣
2007年「第5回アートプログラム青梅」青梅織物工業協同組合女子更衣室/東京
2006年「さまざまな眼148 / ダイアローグ」かわさきIBM市民文化ギャラリー/川崎
2005年「光と風の庭] 愛知万国博2005日本政府館/瀬戸
2004年「開館10周年記念展」リアス・アーク美術館/気仙沼
2003年 個展「 接着/ 交換」ガレリア・キマイラ/東京
2003年「BiCEPTUAL / EXPLORATIONS OF IDENTITY」Hammond Museum/ニューヨーク
2003年「第6 回岡本太郎記念現代芸術大賞展」特別賞受賞 川崎市岡本太郎美術館/川崎
2002年 個展「Adhesion/Replacement」M. Y. Art Prospects/ニューヨーク
2002年「ConversASIAN IN CAYMAN」National Gallery of the Cayman Islands/英国領ケイマン諸島
2001年「現代美術の手法6/光とその表現」練馬区立美術館/東京
2000年 個展「colony」M. Y. Art Prospects/ニューヨーク
2000年「アートみやぎ」宮城県美術館/仙台
1998年 個展「colony」Newhouse Center Artist Access Gallery/Snug Harbor Cultural Center/ニューヨーク
1997年「ART IN TOKYO No.9 /〈私〉美術のすすめ」板橋区立美術館/東京
1997年「光をつかむ/ 素材としての〈光〉の現れ」O美術館/東京
1996年 個展「 さまざまな眼74 – 治癒」かわさきIBM市民文化ギャラリー/川崎
1995年 個展「NOAH2000 – 治癒」リアス・アーク美術館/気仙沼
1994年 個展「Healing」L. A. Artcore’s Brewery Annex/ロスアンゼルス
1994年「IMAGES DU FUTUR ’94」Old Port of Montreal/モントリオール
1993年 個展「治癒」ガレリア・キマイラ/東京
1992年「SCIENCE ART EXHIBITION」セビリャ万国博’92日本館/セビリャ
1991年「はじまりの風景」徳島文化の森21世紀館/徳島
1989年「第1回未来芸術展」準グランプリ受賞 名古屋市科学館/名古屋
1989年「第9回ハラアニュアル」原美術館/東京
1985年「JAPANESE CONTEMPORARY PAINTINGS」インド国立近代美術館/ニューデリー
作品収蔵
2014年「治癒」リアス・アーク美術館/気仙沼
2005年「コロニー」陽だまりハウス/北名古屋
1995年「治癒」リアス・アーク美術館/気仙沼
1992年「ムーンウォーク」大阪府
1992年「MOON CHILD」大阪府

作間敏宏website→ 作間敏宏の仕事