10/16-10/27▷大森博之・伊東明日香|十月の椿

2024年10月16日(水)~10月27日(日)
12:00~19:00 日曜日17:00まで 月・火休廊

人間の真のエロティシズムとは

gallery fuでは、10月16日(水)から10月27日まで「大森博之・伊東明日香|十月の椿」を開催いたします。
ギリシャの哲学者プラトンが著した『饗宴』では、紀元前416年のアテナイにおいて宴会に集まった人々が、愛の神・エロースについて語り合います。そのなかで喜劇作家アリストパネスは非常に興味深い彼の言説を披露します。人間には最初、男・女・そして両性具有という三つの種族がいた。人それぞれの全体の姿は球形であり、すさまじい強さと野心を持ち合わせていたため、それを恐れた神々が、人間を二つに切断してしまう。本性が二つに切断された人間は、それぞれが失われた自分の半身を求め一緒になろうとする、というのです。※1
小説家・河野多恵子(1926ー2015)は、自身の小説「みいら採り猟奇譚」で「普通の恋愛にも一体化したい気持ちはあるが、そこには妨害や疑惑、不安などの夾雑物がある」「マゾヒズムとサディズムの関係は一体感が前提。互いに同等でピュアな一体意識を前提にして刺激される世界」。その最終願望は相手に殺されること、さらに究極の欲望は殺された自分の死後の姿を見ること、と書いています。※2
人間は自分の本当の姿、形、声そして心の世界を外側から離れてみることはできない、だからこそ、もう一人の自分を投影した誰かとの一体感を求めるのかもしれません。

大森博之は、人間の肉体の一部を模した自身の彫刻について、彫られたそれぞれの器官は「外見の物語に取り込まれ、多くは存在を忘却してしまう」と言います。そして「美術作品が現実から虚構へと誘うだけでなく、やがてその虚構から現実へと戻ってくる力、夢から覚める感覚をより強く感じる」と言います。それは私たちに自身の体から離脱し、外側から傍観している感覚を呼び起こさせます。

伊東明日香は、様々なものから解放された真の美しい女性、人間像を追い求めて制作します。欲望や妬みや嫉妬あらゆる苦しみの中でもがいている現実の中で、寒い冬でも葉が枯れることなく、冬から春にかけて堂々と花開き、最後は首からポトリと落下して終わりを迎える椿を理想的だと考えます。そこには前述した一体感という発想よりも、自分という確固たる存在に潔く向かっていくエロティシズムが感じられます。

大森博之の立体作品と伊東明日香の平面作品から、人間の強さと豊かさを受け取っていただけたら幸です。
gallery fu 代表 鈴木智惠
※1『饗宴: 訳と詳解』プラトン (著)、 山本 巍 (翻訳) 東京大学出版会 2016年
※2 2024年9月22日付け 神奈川新聞 5面

大森 博之/OMORI Hiroyuki
1954年 栃木県生まれ
1979年 筑波大学大学院修士課程芸術研究科彫塑専攻修了
主な個展
2024年 artspace & cafe/栃木
2023年 「大森博之展ー断片しか残らない」+Y Gallery/大阪
2023年 Gallery惺SATORU/東京
2020年「彫刻の肉欲/眠れる美女」gallery fu/神奈川
2017年 +Y Gallery/大阪
2004年 鶴見画廊/神奈川
1997年 JAZZオーネット/足利・栃木
1997年 SPACE・U/館林・千葉
1994年 95年、96年、ギャラリー手/東京
1991年 ギャラリーMIU/神奈川
1990年 91年、93年、98年、2000年、03年、06年、09年、11年、14年、16年 なびす画廊/東京
1989年 コバヤシ画廊/東京
1984年 ギャラリートランスフォーム/東京
1983年 84年、85年、86年、89年 ルナミ画廊/東京
1983年 駒井画廊/東京
1980年 81年、82年 楡の木画廊/東京
2014年「版画天国II」なびす画廊/東京
主なグループ展
2021年「次元往来記」Gallery惺SATORU/東京
2019年「空間に線を引く-彫刻とデッサン展 橋本平八から現代の彫刻家まで」平塚市美術館/神奈川、足利市立美術館/栃木、碧南市藤井達吉現代美術館/愛知、町立久万美術館/愛媛
2019年「スサノヲの予感」Gallery TOM/東京
2018年「Art in Park Hotel Tokyo 2019」パークホテル東京/東京
2018年「13人の油絵」+Y Gallery/大阪
2018年「Art in Park Hotel Tokyo 2018 」パークホテル東京/東京
2017年「ART NAGOYA 2017」ウェスティンナゴヤ キャッスル/愛知
2016年「80’s展 享楽と根源」+Y Gallery/大阪
2013年「版画天国」なびす画廊/東京
2012年「光あれ!-光と闇の表現者たち」栃木県立美術館/栃木
2009年「『ミュージアムズ・チョイス この一点』コレクション展Ⅲ」栃木県立美術館/栃木
2009年「DE MYSTICA第2回展 -”アート”全盛期における”美術”-」なびす画廊/東京
2008年「DE MYSTICA~召命~」ギャラリーアート・ポイント/東京
2008年「ラディカル・クロップス プレ展」exhibit Live&Moris/東京
2007年「プライマリー・フィールド美術の現在 -七つの<場>との対話」神奈川県立近代美術館・葉山/神奈川
2006年「大森博之+橋本倫 2人展」鶴見画廊/神奈川
2005年「大森博之+野沢二郎」Takashi Saitoh Gallery/茨城
2005年「2月のおくりもの」なびす画廊/東京
2004年「第19回平行芸術展-彫刻は自分の半身を取り戻す-企画:峯村敏明」小原流会館/東京
2004年「ディスタンス-栃木県出身作家の現在-」栃木県立美術館/栃木

伊東明日香/ITO Asuka
2005年東京芸術大学大学院美術研究科技法材料研究室修了
主な活動
2022年「六本木アートナイト2022 ライブペインティング」六本木西公園/東京
2022年「 Memento Mori ~死を想え、今を生きよ~」藝大アートプラザ/東京
2022年「佐藤一郎とその仲間たち展 テーマ エロス」永井画廊/東京
2021年「佐藤一郎とその仲間たち展 テーマ エロス」永井画廊/東京
2020年 個展「死を意識して、美しく生を纏う展」MASATAKA CONTEMPORARY/東京
2019年「HOMAGE展」Sansiao Gallery/東京
2019年「ミニ〇展」MASATAKA CONTEMPORARY/東京
2019年「Dessin モノクロームの表現」Gallery邨/東京
2019年「第3回佐藤一郎とその仲間たち展 テーマばら」永井画廊/東京
2019年「藝大もののけ祭り 百鬼夜行展」藝大アートプラザ/東京
2019年「おめでとう!春色展」藝大アートプラザ/東京
2019年「藝大アートプラザ常設展」藝大アートプラザ/東京
2019年「公募-日本の絵画-」神奈川
2019年「秘蜜の花園」MASATAKA CONTEMPORARY/東京
2019年「2018•首届亚太艺术展」南京大学美術館/中国
2019年「渡。界」デイハーツギャラリー/中国
2019年「第2回 佐藤一郎とその仲間たち展 テーマ ばら」永井画廊/東京
2019年「ヨコハマハンドメイドマルシェ」神奈川
2017年「handpicked artists」MASATAKA CONTEMPORARY/東京
2019年「MEMENTO」Sansiao Gallery Hong Kong/香港
2016年「Collaboration Project」RISE GALLERY/東京
2016年「Japanese Women Artists」Bernarducci Meisel Gallery(ニューヨーク)
2015年 「おんなのこ博覧会」FUMA CONTEMPORARY TOKYO/東京
2015年  個展「心秘的願望」MASATAKA CONTEMPORARY/東京)
2014年「企業コラボアート東京2014 『with ハローキティ』展」MDP Gallery/東京
2014年「はじまり。展」MASATAKA CONTEMPORARY/東京
2014年「三越×藝大」日本橋三越本店/東京
2013年「企業コラボアート東京2013」MDP Gallery/東京
2013年「初夏のメカニズム展」ライト商會/京都
2012年 「Light room vol. 10」大倉山記念館/神奈川

2013年「幻想の雫」馬車道大津ギャラリー/神奈川
2011年「SHIBU Culture-デパートdeサブカル-」西武渋谷店/東京
2011年 個展「伊東明日香xイトウアスカ-欲望という名のワタシ-」ギャラリーショウ・コンテンポラリー・アート/東京
2010年「だいたい2畳の週替わり展」ギャラリーショウ・コンテンポラリー・アート/東京
2009年 個展「華作品」TURANDOT游仙境/東京
2009年「真夏の夢」椿山荘/東京
2008年「Obsessional object」エリスマン邸/神奈川
2008年「GALERIE SHO PROJECTS VOL.2 7人の新人展」ギャラリーショウ・コンテンポラリー・アート/東京
2008年「THE HOUSE 展/日本ホームズ住宅展示場/東京
2008年「SOMETHING SWEET 4 GIRLS」ギャラリーショウ・コンテンポラリー・アート/東京
2007年「White Collection」大倉山記念館/神奈川
2007年「ヨコハマブギウギ」ギャラリーヨコハマ/神奈川
2007年「第四回REUNAITED展」横浜市民ギャラリーあざみ野/神奈川