7/2-7/13▷前野智彦+構想計画所|Weathering Project

2025年7月2日(水)~7月13日(日)
12:00~19:00 日曜は17:00まで 月・火休廊

地球という家系図

gallery fuでは202572日(水)から713日(日)まで「前野智彦+構想計画所|Weathering Project」を開催いたします。

「構想計画所」は、2021年から毎年gallery fuで新作を発表し続けているグループであり、本展覧会では構想計画所所長の前野智彦が制作した作品を構想計画所がインストールする形式をとる。

タイトルに使用した「Weathering」とは風化のこと。作品は、花崗岩とその風化物である真砂土をセメントや透明樹脂で固めた「歪な球体」をアルミニウム製の梯子を使って階段状に並べたものが主体となる。「歪な球体」は、風化とその風化に抗おうとする人為の象徴にも見える。であれば風化とは主に人間の記憶の風化を指しているのではないだろうか。

前野は、「ヒロシマ」で生まれた。父方の祖父母は被曝体験者である。194586日、祖父は前妻を原爆投下で亡くし、その後再婚した祖母から生まれたのが前野の父、そして次の代となる前野が生まれる。原子爆弾が投下されなければ、今の前野はいなかったという事実がある。

階段状に積み上げられた梯子。そこに置かれた一つ一つの「歪な球体」は、人間の必死さや、時に浅はかとも見える行為の積み重ね、また記憶の塗り固めを連想させ、その全体は、それらの行為が描く家系図のように見ることもできるであろう。

マグマが地下深くで固まってできる花崗岩は、地表に表れるまでに何百万年もかかる(※)と言われている。地球という壮大なドラマの中では、ほんの一瞬とも考えられる人間の営みの痕跡がどこに向かい、今後どのような姿を描いていくのか、想像してみるのも楽しいのではないか。
※)名古屋市科学館HP「世界で一番新しい花崗岩」参照
gallery fu 代表 鈴木智惠


「歪な球体  - 遅い思考実験の現場 -」より

幾度にもわたる保存・修復作業を経て補強され、現在の姿に至った被曝建造物。それが「モニュメント」として存在し続けているという偶然性。そして、それが時間とともに蓄積されてきた事後的な「必然性」。その交差点について ―― 私は、「振り返る」というかたちで思いを馳せていた。修復作業の現場が、あたかも延命治療の現場のように思い起こされる・・・。

「振り返る」という行為に潜む「忘却」
「忘却」されることで獲得される連続性・・・。
前野 智彦/構想計画所 所長

本展覧会関連トークイベント開催
次回gallery fuでの展覧会「海老塚 耕一|fundamental」(716日(水)-727日(日))期間中に、海老塚耕一(美術家)×前野智彦(美術家)×野田尚稔(世田谷美術館学芸員)のトークイベントを開催します。(予約不要・無料)
タイトル:「美術」(鼎談)
日時:719日(土)1600〜1700
会場:gallery fu


構想計画所
構想計画所は前野智彦が所長を務める「複数で形成された単数の緩やかな纏まり」=活動体で、構成員はプロジェクトごとに複数の表現者で組織される。また、各プロジェクトとゆるやかに関連するレクチャーやシンポジウム等を並行して多数企画している。

「人間は自らが棲まっているこの世界を無意識のうちに、人間にとっての意味や目的、あるいは自我や主体といった整合性や一貫性を軸に理解しようとするが、世界は常に人間に無関心で無関係であるかのような出来事の続起に満ちている」このことを前提に出発する構想計画所は、整合性や一貫性に回収できない/されない世界、あるいは人間にとっての意味や目的、自我や主体すら崩壊させてしまうような出来事を、無人島という人間のいない世界、あるいは島という自然の力動が生み出す不安定な大地の生成過程へと、人文学(人文科学)的視点とともに独特の仕方で結びつけることで、人間がこの世界に棲まうことをさしあたり可能にしている「なにものか」を発見し、人間的な営みである芸術のフィールドから発信している。

主な個展
2024年「Weathering Projectgallery fu/神奈川
2023年「Weatheringgallery fu/神奈川
2022年「月の台座島の定義から外れた岩礁の形象gallery fu/神奈川

2021年「別名保存」gallery fu/神奈川
2021年「想像力の転回」Plaza Gallery/東京
2018年「想像力の転回」GALLERY HASHIMOTO/東京
2016年「離人/島人間よりも前から来る、あるいはその後へと向かうものー」gallery COEXIST – TOKYO /東京

2014年「Holt- 雑木林を巡る哲学と美術と出来事」小平中央公園脇の雑木林/東京《小部屋のある32m の破線》
主なグループ展
2017年「引込線2017」旧所沢市立第2学校給食センター/埼玉「green cube Project
2015年「第18回岡本太郎現代芸術賞展」川崎市岡本太郎美術館 /神奈川「Ω

2013年「Impact 8 – International Printmaking ConferenceDuncan of Jordanstone College of Art & Design /イギリス